分詞構文の翻訳

キーポイント
  • 後ろに分詞構文が続く場合は、分詞の位置で2文に切って訳し下ろす
  • ただし、手段を表す場合は訳し上げる

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分詞構文の働き

分詞構文は、メインとなる文に情報を付加する構文です。分詞構文にはいくつかの用法 (意味) がありますが、技術文書でよく使われる用法は以下のとおりです。

  • 結果を表す。結果を表すので、メインとなる文の後に付きます。 例: In this case, a currency symbol precedes the amount of money, representing which currency is used.
  • 手段を表す。 例: You can also specify multiple values in the same field, separating them by comma.

学生向けの英文法の解説書では、いずれも付帯状況と説明されることが多いようです。

結果を表す分詞構文

文の後に付いて結果を表す分詞構文は、to不定詞の場合と同様に訳し下ろすことができます。

キーポイント
  1. 分詞の位置で2文に切り、
  2. 英語の語順どおりに翻訳する (訳し下ろす)

例を示します。

In this case, a currency symbol precedes the amount of money, representing which currency is used.

この文では、「A currency symbol precedes the amount of money」の後に分詞構文「representing which currency is used」が続いています。representing以下は、「……しながら」という意味ではありません。

(×) この場合、どの通貨を使用するかを表しながら通貨記号が金額の前に付きます。

「representing which currency is used」が「the amount of money」を修飾するという解釈も誤りです。

(×) この場合、通貨記号が、どの通貨を使用するかを表す金額の前に付きます。

上の例のrepresenting...は前の文の結果を表します。representing...の主語は前の文 (a currency symbol precedes the amount of money) と共通です。つまり、以下の2文が1文にまとまっています。

  • A currency symbol precedes the amount of money.
  • The currency symbol represents which currency is used.
→ In this case, a currency symbol precedes the amount of money, representing which currency is used.

分詞構文が後ろに続く場合も、to不定詞の場合と似た考え方で翻訳することができます。最初のステップとして分詞の位置で文を切り、2つの要素に分解します。

In this case, a currency symbol precedes the amount of money / representing which currency is used.

次に、前半と後半をそれぞれ日本語に翻訳します (受動態の翻訳については「受動態の翻訳」を参照してください)。

この場合、通貨記号が金額の前に付きます / どの通貨を使用するかを表します

最後にそれぞれの訳文を「……して」で結合します。

この場合、通貨記号が金額の前に付いてどの通貨を使用するかを表します。

「……し、」で結合することもできます。

この場合、通貨記号が金額の前に付き、どの通貨を使用するかを表します。

手段を表す分詞構文

分詞が文の後に付いていても、結果ではなく手段を表すことがあります。見た目だけでは区別しにくいので注意が必要ですが、手段を表す文脈は限られます。

キーポイント

分詞の前にbyを補って翻訳する

例を示します。

You can also specify multiple values in the same field, separating them by comma.

この文は、以下の内容を述べているわけではありません。

You can also specify multiple values in the same field
→その結果、separate them by comma
(×) 同じフィールドに複数の値を指定し、コンマで区切ることもできます。

翻訳するときには、by separating...と考えると分かりやすいでしょう。

You can also specify multiple values in the same field by separating them by comma.
同じフィールドに複数の値をコンマで区切って指定することもできます。

文脈によっては、by ...ingによる手段の表現と同様に訳し下ろせますが、訳文が前後とつながるように、必ず文脈を判断してください。よく分からない場合は、訳し上げておくと無難です。

手段を表す分詞構文としては、特にusingが頻出します。

You can secure your smartphone using Security app.

この文も、以下の内容を述べているわけではありません。

You can secure your smartphone
→その結果、use Security app
(×) スマートフォンのセキュリティを確保してSecurityアプリを使用することができます。

この場合も、by using...と考えると分かりやすいでしょう。

You can secure your smartphone by using Security app.
Securityアプリを使用してスマートフォンのセキュリティを確保することができます。

もちろん、この例文もby ...ingによる手段の表現と同様に訳し下ろせます。繰り返しになりますが、by ...ingを訳し下ろすときは、前後と脈絡が切れないように、必ず文脈を判断してください。

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