基礎的な日本語表現

キーポイント
  • 訳文を書き換えるときには「意味が変わらないか」常に注意する。
    書き換えが正しいと確信できない限り、訳文を書き換えない。
  • 名詞ではなく動詞で表現する

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圧縮表現を避ける

以下の英文は Enter the name of the user in the Login window. 以下のように翻訳することができます。 [Login] ウィンドウにユーザの名前を入力します。

この訳文で何も問題はありませんが、少し翻訳に慣れてくると「ユーザ名」という言葉があることに気付き、「ユーザの名前」より「ユーザ名」とする方が訳文として格好いいという理由で以下のように書き換えるようになります。

[Login] ウィンドウにユーザ名を入力します。

別の例を示します。以下の英文を Specify the name of the file created in Step 2. 逐語訳すると以下のようになります。 手順2で作成したファイルの名前を指定します。

「ファイルの名前」より「ファイル名」とする方が訳文として格好いいという理由で以下のように書き換えてみました。 これは正しい訳文でしょうか。

(?) 手順2で作成したファイル名を指定します。

原文をもう一度検討してみると、「手順2で作成した」のはファイルであり、ファイル名でないことが分かります。しかし、「手順2で作成したファイル名」としてしまうと「ファイル」と「名」の結び付きが強くなり、ファイルではなくファイル名を作成したという意味になってしまいます。

このように、むやみに言葉を圧縮すると誤訳になる場合があり、危険です。 「の」が続くと訳文が格好悪くなると感じるかもしれませんが、格好悪くても正しく意味を伝える訳文の方が誤訳に勝ります。

訳文を書き換えるときには「意味が変わらないか」常に注意する必要があります。 そして、意味が正しく反映されていると確信を持てない場合は言葉を圧縮しない方が安全です。

キーポイント

訳文を書き換えるときには「意味が変わらないか」常に注意する。

書き換えが正しいと確信できない限り、訳文を書き換えない。

冗長表現を避ける

技術文書は多くの人に情報を伝達する役割を担っています。 このため、技術文書を翻訳する場合は多くの人にとって読みやすい訳文を書く必要があります。 訳文を読みやすくするには、訳文をシンプルにするのが効果的です。

英文を翻訳するときに、原語と訳語が一対一に対応するように翻訳すると冗長になる場合があります。

If you make any changes to the source files, ...
(△) ソース ファイルに対する変更を行う場合は、……

この訳例は以下の要領で翻訳されました。

  • 原文でchangesと名詞が使われていることから、名詞のまま「変更」と翻訳した
  • 原文でmakeがその名詞を受けていることから、makeを「行う」と翻訳した

しかし、「変更を行う」という表現よりも「変更する」の方がシンプルです。

ソース ファイルを変更する場合は、……
キーポイント

名詞ではなく動詞で表現する

英語は名詞を中心として表現する言語ですが、日本語は動詞を中心として表現する言語なので、名詞による表現を多用すると訳文が苦しくなります。

(×) 例3ソース ファイルでの17行目クラス型定義の変更を行う

「の」が連続して見苦しいので、以下のように書き換えてみましたが、どうでしょうか。

(×) 例3に示すソース ファイルにおける17行目にあるクラス型定義の変更を行う

読んでいる間に息切れしそうな訳文であることに変わりはありません。日本語では、連体修飾 (名詞の修飾) が長く連なると、苦しい文になってしまうのです。

動詞を中心として翻訳すると「の」の連続を回避できるだけでなく、息切れしそうな文になってしまうのも未然に防ぐことができます。

例3のソース ファイルにおいて17行目のクラス型定義を変更する
例3のソース ファイル17行目のクラス型定義を変更する
例3のソース ファイルのうち、17行目のクラス型定義を変更する

過剰な丁寧表現

技術文書は他の人に情報を伝達する役割を担っています。 例えば、製品に添付するマニュアルの場合は、お金を出して購入した顧客が読むものなので、言葉遣いが高圧的にならないように注意しなければなりません。

しかし、丁寧な言葉遣いも度を過ぎるとかえってわずらわしくなります。

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