- 日本語の句読点はテン (、) とマル (。) だけ
- 命令文は「……します」「……する」と翻訳する
- youは訳出しない
注: 横書きの場合はテン (、) とマル (。) の代わりにコンマ (,) とピリオド (.) を使うこともあります。表記が決められている場合は、その表記に従ってください。
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英語では、日本語より多くの句読点 (punctuation mark) が使用されます。技術文書で頻繁に使用される句読点を以下に示します。
コロンの処理
コロンにはいくつかの機能がありますが、よく使われる機能として、直前の文に対して、さらに詳しく補足する機能が挙げられます。 コロンにはfollowingやas followsの意味が含まれているので、英文でfollowingやas followsと記述されていなくてもfollowingなどのニュアンスを訳文に持たせる必要があります。
コロンは日本語の句読点ではないので、訳文の文末にはコロンを置かず、マル (。) を使用します。
while (<条件>) 文 ;
注: 横書きの場合はテン (、) とマル (。) の代わりにコンマ (,) とピリオド (.) を使うこともあります。表記が決められている場合は、その表記に従ってください。これ以降、テンとマルに言及する場合は、コンマとピリオドも含むものとします。
英文にfollowingやas followsと記述されている場合は、コロンを意識せずに翻訳することができます。
whileステートメントの構文は以下のとおりです。
本機には以下のディスク ドライブを接続することができます。
(※受動態の翻訳技術については「受動態の翻訳」を参照してください)
英文にfollowingやas followsが明示されている場合は、文末にコロンではなくピリオドが置かれる場合もあります。
コロンは日本語の句読点ではないため、上記の訳文では文末にコロンではなくマル (。) を使用していますが、見出しやラベルなどの区切りとして使用されている場合はコロンを使用するのが一般的です。
(×) 注。この制限はWindows版にのみ適用されます。
(○) 注: この制限はWindows版にのみ適用されます。
この場合にマル (。) を使用するとかえって違和感が強くなります。
セミコロンの処理
セミコロンにはいくつかの働きがありますが、ここでは技術文書で頻繁に使用される用法に限って説明します。
セミコロンの重要な機能として、2つの文をつなぐ働きがあります。however、therefore、that is、for exampleなどの語句を伴う場合は特にセミコロンを意識せずに翻訳することができます。
一時ファイルは文書と同じフォルダに格納されますが、ファイル リストには表示されません。
名前では大文字と小文字が区別されます。例えば、FieldNumberとfieldnumberは別の名前として扱われます。
どのような接続関係にあるかがhoweverなどの語句で示されていない場合は、セミコロンのニュアンスをくみ取って翻訳します。ただし、「しかし」「すなわち」「したがって」などと明示するとかえって訳文がうるさくなる場合は、単にテン (、) で区切るだけで十分です。
length() 関数はsize() の別名であり、s.length() はs.size() と同じ値を返します。
コンマの処理
コンマには多くの用法がありますが、挿入句の場合は注意が必要です。
(×) 一部の関数、printf() やscanf() など、は可変個のパラメータをとります。
(○) 一部の関数 (printf() やscanf() など) は可変個のパラメータをとります。
(○) printf() やscanf() などの一部の関数は可変個のパラメータをとります。
日本語には挿入句をテン (、) で区切る習慣がないので、挿入句はかっこで囲んで訳出するか、文の中に組み込んでしまいます。
ダッシュの処理
ダッシュ (—) を使用して挿入句を示す場合もあります。ダッシュは日本語の句読点ではないので、ダッシュではなくかっこで囲んで訳出するか文の中に組み込んでしまいます。この翻訳方法はコンマの場合と同様です。
(×) 以下の例では、上記の変換関数—packおよびunpack—を使用してバイナリ データベースにアクセスしています。
(○) 以下の例では、上記の変換関数 (packおよびunpack) を使用してバイナリ データベースにアクセスしています。
ダッシュ (—) の別の用法として、ダッシュの前の文に続いて補足的な内容を記述する用法があります。 ダッシュは日本語の句読点ではないので、訳文では、補足の内容をかっこで囲むか、別の文として独立させます。
(×) CAST演算子は10進整数のみを受け入れます — 16進整数の変換は……
(○) CAST演算子は10進整数のみを受け入れます。16進整数の変換は……
ダッシュを使用できない場合 (テキストファイルやタイプライタなど) では、ハイフン2個 (--) またはハイフン1個 (-) で代用する場合もあります。
ハイフンの処理
ハイフンの重要な働きとして、複数の語句をつなぐ働きがあります。
この例では、pop-upは動詞表現pop up (ポンと飛び出すこと) に由来する言葉です。 動詞表現pop upは2単語であり、そのままでは形容詞的にmenuを修飾することができないため、ハイフンを使用して結合する必要があります。また、right-clickingはrightとclickが結合された動詞right-clickにingが付いた形です。
複数の語句がハイフンで結合されている場合でも、訳文ではハイフンを使用しません。これは、ハイフンは日本語の句読点ではなく、日本語ではハイフンを使用せずに言葉を結合するためです。
(×) アイコンを右-クリックすることによってポップ-アップ メニューを開きます。
(○) アイコンを右クリックすることによってポップアップ メニューを開きます。
→ アイコンを右クリックしてポップアップ メニューを開きます。
別の例を示します。
(×) 年は4-桁の整数でなければなりません。
(○) 年は4桁の整数でなければなりません。
(×) このメソッドはk-近傍法を適用します。
(○) このメソッドはk近傍法を適用します。
(×) HTML-enabledエディタが提供されています。
(×) HTML-対応のエディタが提供されています。
(○) HTML対応のエディタが提供されています。
HTMLはHyperText Markup Languageの略であり、訳文でもそのままHTMLと表記しますが、enabledを英字のままにしておいてはなりません。
また、数値の範囲を示す用法もあります。厳密にはnダッシュ (–) という記号を使用すべきとされていますが、ハイフンを使用しているケースも多く見られます。
(×) 16進数は0-9およびA-Fで構成されます。
(○) 16進数は0〜9およびA〜Fで構成されます。
(○) 16進数は0から9およびAからFで構成されます。
日本語で範囲を表す場合はハイフンやnダッシュではなく「〜」を使用します。また、「から」とかな表記することもできます。
命令文の翻訳
ユーザに操作手順を示す場合は、以下のような英文が使用されます。
- Insert the installation DVD. The Setup window appears.
- Check the Standard Installation check box.
- Click Next at the bottom of the window.
多くの場合、読者に対する指示には命令文が使用されます。命令文ですが、読者 (場合によってはお客様) に対して「……しなさい」と命令するのは高圧的な印象を与えてしまいますし、そもそも技術文書に「……しなさい」という表現は使用しません。技術文書の命令文はユーザに対する指示を示すだけなので、通常は単に「……します」「……する」と翻訳します。
命令文は「……する (します)」と翻訳する
上記の例を翻訳してみましょう。
- インストールDVDを挿入します。[Setup] ウィンドウが表示されます。
- [Standard Installation] チェック ボックスにチェック マークを付けます。
- ウィンドウの下部にある [Next] をクリックします。
- インストールDVDを挿入する。[Setup] ウィンドウが表示される。
- [Standard Installation] チェック ボックスにチェック マークを付ける。
- ウィンドウの下部にある [Next] をクリックする。
「……してください」と翻訳すると押し付けがましく、くどい訳文になってしまいます。「……してください」という表現は、読者に特に注意を促さなければならない場合に限って使用します。 上の訳文を以下の訳文と比較してみてください。
- インストールDVDを挿入してください。[Setup] ウィンドウが表示されます。
- [Standard Installation] チェック ボックスにチェック マークを付けてください。
- ウィンドウの下部にある [Next] をクリックしてください。
youの翻訳
youは読者を指しますが、通常、youに対する訳語は省略します (訳出しません)。いちいち「ユーザ」と訳出するのも目ざわりです。
youは訳出しない
(×) あなたは、HTMLブラウザを使用することによってWebページを表示させることができます。
(×) ユーザは、HTMLブラウザを使用することによってWebページを表示させることができます。
(○) HTMLブラウザを使用することによってWebページを表示させることができます。
yourの場合も同様に訳語を省略します。
(×) デフォルトでは、あなたの文書は [マイ ドキュメント] フォルダに保存されます。
(×) デフォルトでは、ユーザの文書は [マイ ドキュメント] フォルダに保存されます。
(○) デフォルトでは、文書は [マイ ドキュメント] フォルダに保存されます。
youのほかに、he、she、theyが使用される場合もありますが、同様に訳語を省略します。
ただし、まれにシステム管理者、一般社員、消費者など複数の立場の人に触れているためにyou、he、she、theyなどを明示的に訳出しなければならない場合もあります。 この場合に「you=ユーザ」と固定的に訳出することはできません。 どの代名詞が誰を指すかを正確に理解して、区別して訳出する必要があります。
数量の比較
以下の英語表現は、決まり文句として翻訳します。
英語 | 日本語訳 |
---|---|
greater than | より大きい 超過 |
greater than or equal to | 以上 |
less than | より小さい 未満 |
less than or equal to | 以下 |
例をいくつか示します。
(×) ShipDateの値はArrivDateの値より大きいか等しくなければなりません。
(○) ShipDateの値はArrivDateの値以上でなければなりません。
「……より大きいか等しい」という言い方はしません。
(○) フィールド番号が0より小さい場合は、フィールドは返されません。
(○) フィールド番号が0未満の場合は、フィールドは返されません。
(◎) フィールド番号が負の場合は、フィールドは返されません。
上記の表ではgreaterとlessを紹介しましたが、large、small、high、low、early、lateなどの語句が使用されることもあります。
(○) 本製品にはWindows 10以降が必要です。
→ 本製品を使用するにはWindows 10以降が必要です。
(○) Windows NT (SP4以降を適用したもの)
(×) 表示されたバージョン番号が3.3より前または等しい場合は、インストール前にシステムをアップグレードする必要があります。
(○) 表示されたバージョン番号が3.3以前の場合は、インストール前にシステムをアップグレードする必要があります。
(○) 表示されたバージョン番号が3.3までの場合は、インストール前にシステムをアップグレードする必要があります。