以下の英文を翻訳します。この訳例にはwantの翻訳技術を適用しています。
(文1) Select at least one report that you want to delete.
(訳1-1) 削除したい1つ以上のレポートを選択します。
→ (訳1-2) 削除する1つ以上のレポートを選択します。
ただし、この訳文ではまだ日本語に落とし込めていない感があります。理由は2つあります。
- 日本語では、数量を副詞として表現するほうが一般的
- 英語では対象物が単数か複数かを常に意識するが、日本語では意識しない
それぞれの観点から、上記の訳文を検討していきます。
日本語では、数量を副詞として表現するほうが一般的です。つまり、 2個のおにぎりを食べる よりも おにぎりを2個食べる のほうが自然です。
この観点から、訳文でも数量を副詞として表現しましょう。
Select at least one report that you want to delete.
(訳1-3) 削除するレポートを1つ以上選択します。
(訳1-4) 削除するレポートを少なくとも1つ選択します。
日本語らしくなってきました。それでもまだ違和感があります。今度は、単数と複数を意識するかどうかの点から検討します。
数を数えているのか
英語では、話題として取り上げる対象物が単数か複数かを常に意識します。そのために、文1でもいちいちat least one reportと書いています。上記の訳文が日本語としてこなれていないと感じるのは、このat least one reportをそのまま日本語に置き換えているためです。
問題は「1つ以上」や「少なくとも1つ」という数の表現にあります。通常はレポートを選択するときにいちいち数を数えませんが、上記の表現ではその数を意識した書き方になっています。
そもそもat least oneを「1つ以上」や「少なくとも1つ」と翻訳したのはなぜでしょうか。理由は、元の英文で単数と複数を厳密に区別していたためでした。ただし、それはあくまで英語での物事の捉え方です。決してレポートの数を数えることを目的としているわけではありません。
数量表現を訳文から外しましょう。
(訳1-5) 削除するレポート (複数可) を選択します。
(訳1-6) 削除するレポートを選択します (複数可)。
技術系の文章であれば「複数可」と書き添えるだけで十分です。「レポート」と「複数可」が遠く離れなければ、訳1-6のように文末に置くこともできます。
初心者向けの説明であれば、丁寧に訳出する方法もあります。
丁寧ですが、かなり訳文が長くなります。通常は簡単に「複数可」と書き添えるだけでよいでしょう。