翻訳テクニック集 目次

to不定詞と前置詞

以下の英文を翻訳してみましょう。

(文1) Type the string to filter by in Search field.

フィルタリングする文字列を [検索] フィールドに入力します。

注: 英語版画面のSearchが日本語版で「検索」になっているとします。

これでは、フィルタを適用する対象を入力するかのように読めてしまいます。つまり、英文にbyがない場合の訳文 Type the string to filter in Search field.
フィルタリングする文字列を [検索] フィールドに入力します。
とまったく同じ訳文になっており、想定している状況がfilter by the stringであるかfilter the stringであるかが、訳文を読んでも分かりません。

元の英文はfilter by the stringを想定していますから、このbyの意味を明確に訳文に反映させる必要があります。

翻訳するときの考え方は、関係代名詞を翻訳する場合と同じです。関係代名詞を使った文に書き換えて、翻訳の考え方をなぞっていきましょう。

(文2) Type the string by which you filter in Search field.

このbyを明確に訳出します。文2を、関係代名詞を使わずに2文に分離すれば Type the string in Search field. You filter by the string. となります。byは基準を表しています。このことを踏まえて翻訳すると、 文字列を [検索] フィールドに入力します。その文字列を条件にしてフィルタリングします。

この下線部の意味を明確に訳文に反映させればよいわけです。

(文2) Type the string by which you filter in Search field. フィルタリングの条件とする文字列を [検索] フィールドに入力します。

to不定詞の例題に戻りましょう。関係代名詞の場合と同じ要領で翻訳します。filter by the stringですから、

(文1) Type the string to filter by in Search field.

フィルタリングの条件とする文字列を [検索] フィールドに入力します。

文1は、関係代名詞を使用して以下のように書くこともできます。

(文3) Type the string by which to filter in Search field.

表す意味は文1と同じです。by which to filterはto filter byより改まった表現とされています。技術文書では、この関係代名詞を使った形も使われます。マニュアルでも見かけるので、覚えておいて損はありません。

他の前置詞の例についても見ていきましょう。以下の英文を翻訳しましょう。

(文4) Could not find the server to which to forward e-mails.

この英文を (訳4) Eメールを転送するサーバが見つかりませんでした。 と翻訳してしまっては、 (文5) Could not find the server to forward e-mails.
Eメールを転送するサーバが見つかりませんでした。
と区別できません。

文4と文5の意味がまったく異なることは明らかです。文4では、前置詞を伴う関係詞to whichの後にto不定詞が続いており、意味の上で forward e-mails to the server という関係が成立しています。対照的に、文5では the server forwards e-mails という関係が成立しています。この関係の違いを訳文に反映させなければなりません。

文4に対する正しい訳文は以下のとおりです。

(文4) Could not find the server to which to forward e-mails.

Eメールの転送先サーバが見つかりませんでした。

もうひとつ、関係代名詞にto不定詞句が続く英文を翻訳してみましょう。

(文6) specify the order in which to apply the mail filters using the up and down arrows

前置詞を伴う関係詞in whichの後にto不定詞が続いています。つまり、このto不定詞で to apply the mail filters in the order という関係が成立しています。

日本語に翻訳すると、 上下の矢印を使用して、メール フィルタを適用する順序を指定する

少し書き換えると、訳文がシンプルになり、読点が不要になります。

上下の矢印を使用してメール フィルタの適用順序を指定する

文6の場合はinの意味を意識しなくても日本語に翻訳できてしまいますが、the orderを修飾するのでinが必要だという点は押さえておきましょう。

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