量の名称を使用せずに単位で表現している場合があります。
current_time contains the number of minutes elapsed since the program was started.
current_timeは、プログラムが起動されてから経過した分数を保持する。
時間を1 minute、2 minutes……と数えるので、原文ではminuteの数としてthe number of minutesと書いています。技術翻訳ではこのような英文もよく見かけます。訳文では、その英文のままにthe number of minutesが「分数」と翻訳されています。もちろん「ふんすう」と読まれることを期待しています。
果たして「分数」という言い方はするのでしょうか。身近な例で考えてみましょう。品川から新宿まで移動するのにかかる時間を尋ねるときに、どのような言い方をするでしょうか。
品川から新宿までの分数は?
品川から新宿までの時間は?
通常は「分数
current_timeは、プログラムが起動されてから経過した時間を分単位で表した値を保持する。
→current_timeは、プログラム起動以降の経過時間を分単位で表した値を保持する。
厳密な訳ですが、やや長くなりました。通常はもっと簡潔な訳で十分です。
current_timeは、プログラム起動以降の経過時間 (分単位) を保持する。
もちろんsecondの場合も同様です。
the number of seconds required to start the server
(△) サーバの起動に要した秒数
(○) サーバの起動に要した時間 (秒単位)
「ふんすう」と「ぶんすう」の場合と異なり、秒数と書いても意味がまぎれることはありませんが、「秒数」では舌足らずな印象があります。「時間」と書きたいところです。
時間以外の表現も同様です。
This function returns the number of bytes contained in the specified file.
(×) この関数は、指定されたファイルに含まれるバイト数を返す。
(○) この関数は、指定されたファイルのサイズをバイト単位で返す。
このファイルの中にはバイト数が記録されているのでしょうか。「指定されたファイルに含まれるバイト数」と翻訳すると、ファイルの中にデータとしてバイト数が記録されているように読めます。しかし、原文ではファイルの中に複数のバイトが存在し、そのバイトの数を返すと言っています。
ファイルの中に存在するのはバイト数ではなく、データです。この英文と最初の訳例では「ファイルに存在するデータ」と「データのバイト数」の2つの概念が区別されていません。「サイズ」と書くことで、正確で自然な日本語訳になりました。
単位を明示する必要がなければ省略して構いません。
Table 1 shows the number of calories you need each day.
1日に必要なエネルギー (カロリー単位) を表1に示す。
1日に必要なエネルギーを表1に示す。
文中でエネルギーをどの単位で表すかに重点を置いておらず、表に単位が記載されていれば、カロリー単位であることを訳文で明示する必要はありません。
上記とは対照的に、単位を使った「……数」という表現が一般的な場合もあります。
トレイに収納できる用紙の枚数
地域Aで購読されている新聞の部数
これらの場合に「……数」と書くのは問題ありませんし、「……数」と書くほうが自然です。