「外資系の会社のWebサイトって、一応漢字やカナが並んで日本語のような形はしてるけど、読んだ後に頭の中に何も残らない。いったい何が書いてあったのか分からないんだよ」
あるお店の店主から聞いた話です。この人は、必要な情報が得られずに相当イライラしたのではないでしょうか。アクセスしたのは、おそらく外資系の企業が海外で制作した外国語のサイトを日本語化したページでしょう。わざわざ日本語版サイトを開設したというのに、そのサイトが顧客ロイヤルティの向上や新規顧客の開拓に寄与するどころか、逆に評判を落としてしまっているのですから、もったいない話です。よほどの事情がない限り、誰も苦労して意味不明な講釈を解読しようとは思いません。辛抱強くサイトに付き合うのは、どうしてもその製品やサービスを利用しなければならない人か熱烈なファンに限られます。
せっかく日本語版サイトを開設するのですから、何も自ら顧客を遠ざける必要はありません。アクセスしてくれたユーザにはどんどんファンになってもらいましょう。
日本語版サイトが意味不明になってしまう原因はいくつかあります。
原因の1つに、翻訳 (ローカライズ) の問題があります。原文の逐語訳を作るのに精一杯で、日本語に落とし込めていないのです。形だけ日本語の体裁が整っていますが、元の単語それぞれに機械的に辞書の訳語を当てはめただけで本当の意味を反映していないため、訳文を読んでも明確なイメージが形成されません。また、原語での物事の捉え方と日本語での捉え方の違いも越えられず、日本人の感覚に沿わない文章になっています。
このほか、本国で受けのよい文章や構成が日本人にも受けるとは限らないという問題もあります。この問題は翻訳だけでは乗り越えられません。全体を見直して日本人の感覚に沿わない箇所を洗い出し、日本人向けの記述に差し替える必要があります。この場合は、日本向けのサイトを一から作り上げるつもりで日本人顧客に何を訴えるか明確化し、サイト構成に反映させる必要があります。翻訳の領域を包摂しつつさらに領域が拡大し、広告・広報の企画に近くなります。
いずれにしても、わざわざ資金を投下して開設するサイトです。営業戦略の中にしっかりと組み込んで、ユーザを遠ざけるのではなく、効果的に引き込んでいきたいものです。