翻訳するときに、原文の記述自体が冗長な場合があります。
(文1) update the locally stored copy on the client
これはユーザから見た文脈で出てきた表現です。ユーザから見ればクライアントに保存することとローカルに保存することは同じことですから、「クライアントにローカルに保存する」はくどく感じます。
しかし、この英文を書いた人はローカルであることを強調したかったのかもしれません。locallyを完全に訳文から省いてしまうのは抵抗があります。訳文にも「ローカル」を残しておきましょう。逐語訳は以下のようになります。
(文1) update the locally stored copy on the client
(訳1-1) クライアント上の、ローカルに保存されたコピーを更新する
ただし、日本語で連体修飾が連続すると意味が分かりにくくなります。書き換えましょう。
locally stored copyの意味がlocal copyと同じであることに着目します。locallyが副詞としてstoredを修飾していたところを、「コピー」を修飾するように形容詞的に訳出します。
(文1-2) update the local copy on the client
(訳1-2) クライアント上のローカル コピーを更新する
別の翻訳方法もあります。日本語で連体修飾が連続しないように、on the clientをstoredにかけてしまうのです。つまり、以下のように見なして翻訳するわけです。
(文2) update the copy stored locally on the client
(訳2-1) クライアントにローカルに保存されたコピーを更新する
しかしこの訳文では、同じ機能を果たす助詞を繰り返しており (……に……に)、情報を小出しにしている印象があります。書き換えましょう。
ローカルなのはクライアントの内部であることに着目します。
これで、ローカル環境であることを明示しつつ、訳文をくどく感じさせずに済みます。
翻訳技術の観点からは、文2でlocallyをon the clientの言い換えと見なして、locallyが副詞としてstoredを修飾していたところを、「クライアント」と「ローカル環境」の同値関係に置き換えています。