calendar dayという表現を見かけました。技術翻訳でありがちな表現なので、この機会に検討することにします。
以下の英文を日本語に翻訳してみましょう。
calendar dayは、カレンダー上での1日のことです。1日といってもいろいろな基準の取り方があります。現在の時刻からさかのぼって24時間以内でも1日です。原文では、calendar dayと明記することで、カレンダー上の1日を区切りとすることを強調しています。
手元のリーダーズ英和辞典でcalendar dayを引くと、以下のように説明されています。
暦日《0時から0時までの24時間》
そうです!「カレンダー上の1日」という回りくどい言い回しではなく「暦日」と言えば一言で言い表すことができるのです。
さっそく翻訳してみましょう。
変な訳文です。日本語で1暦日、2暦日と数えているのを見聞きしたことがありません。1暦日、2暦日と数えるには無理があります。
数え方の問題は解決されましたが、何やらはっきりしない訳文です。
そもそもの問題は、暦日という言葉になじみがなく、暦日と言われてもピンとこないことです。なじみのない言葉を使うと、読者が解読のために頭をひねることになります。もっと読みやすく分かりやすい訳文を作らないと読者に不親切です。
先ほど調べた辞書の語意に暦日の説明が出ていました。それによれば「0時から0時までの24時間」とのことですから、この解説を当てはめてみましょう。
長ったらしい訳文になってしまいました。「0時から0時まで」と「24時間」は同じ意味ですから、表現が重複しています。ここで重要なのは時間ではなく、起点と終点ですから、「0時から0時まで」を残します。
0時とは何時のことでしょうか。24時制であれば午前0時のことですが、ここでは12時制とも24時制とも書いていないので、単に0時と書くだけでは読者が迷ってしまうかもしれません。
0時や12時が午前か午後かというのは間違えやすいので、深夜0時と書くほうが確実に伝わります。
だいぶ改善されましたが、「深夜0時から深夜0時まで」というのも、何だか出発点に戻ってくるみたいで気持ち悪いです。翻訳のときには、この「気持ち悪い」という感覚が大事です。それに、何日後の深夜0時までを指すかがあいまいです。当日中であれば通常は「24時」というでしょう。
しかし、同じ時刻なのに「0時」と「24時」の2とおりに書くのも気持ち悪いです。対象としている時間がいつの深夜0時までか明記することにしましょう。
これで時刻範囲の問題が解決しました。上記の訳文では起点と終点を記す形を採用していますが、起点と時間を組み合わせて翻訳することもできます。
この方法であれば、終点の表現に悩むことはありません。
以上でcalendar dayの訳は解決しました。訳文にある「含む」という訳語については、別の項で検討します。